JICHOUJIAI

「ゆらぎ世代」を「自重自愛」で乗り切る40代主婦のブログ

百田尚樹「モンスター」主人公の生きざま・執着心に胸が詰まる

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読み終わった後、愕然としてしまう本に巡り合うことはなかなかありません。私は小説を何度も読み返すことはめったになく、とっておきたい・再度読みたいと思わなければ手放すことがほとんどです。

百田尚樹「モンスター」は、手放したくない本。読了してから3年になるのに再度読もうとはまだ思えてません。ラストをわかっているだけに切なすぎて、もう一度読むのはまだまだ先になりそうです。

500ページ弱にも及ぶ長い本編のラスト、主人公は一瞬でも幸せを感じることができたのだろうと思いきや、その後のエピローグ最後の2ページを読みあまりに哀れ、やりきれなくて愕然としてしまいました。

この本の何が怖いかというと、私の中にも必ずあるだろう「女の業の深さ」「心の渇望感」をまざまざと見せつけられている感じがするんです。

美への凄まじい執着、美しくなるごとに人への冷徹さが増し、自分を蔑んだ人に報復しなければ気が済まない利己主義な主人公。決して共感できない主人公だけどエピローグを読み終え、最後主人公は報われたのだろうか?幸せを感じたのだろうか?感じていてほしいと願うような気持になります。 

百田尚樹「モンスター」 

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『モンスター』あらすじ

主人公は、生まれ故郷に戻りレストランを経営する美女「鈴原未帆」38歳。「鈴原未帆」の正体は、かつて町で「モンスター」と呼ばれていた「田淵和子」。容姿に恵まれず「田淵和子」は子供の頃から美しい姉の智子からも、同級生からも、外見を理由にイジメを受けていた。

高校生になるとクラスメイトの「高木英介」に恋心を募らせる。恋心からある事件を起こし「モンスター」と呼ばれるようになり高校を卒業した翌日、親からも勘当同然で町を追われ東京へ。24歳になった「田淵和子」は、東京の風俗で働き稼いだお金で美容整形を繰り返し美を追い求める。

総額1000万以上をつぎ込み、二重まぶたの埋没法・鼻・歯のインプラント、他にも数え切れないほどの整形手術をして「田淵和子=鈴原未帆」は美女となり男性は次々と彼女の虜になっていく。完璧な美人に変身を遂げても忘れられないのはクラスメイトだった「高木英介」への思い。

月日は流れ38歳「田淵和子=鈴原未帆」は、整形で手に入れた美しい容姿・高級店で稼いだ大金・親でも気づかない程の別人になり、20年ぶり生まれ故郷に戻りレストランを開店。かつて愛したクラスメイト「高木英介」が、お客さんとして店に来ることを信じて待ち続ける。

そして「田淵和子=鈴原未帆」は、「高木英介」と再会することに・・・・・

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私は三十年近く生きてきて、世の中がいかに不公平なものであるかということをたっぷり学んできた。今さらそのことに不満を言うつもりはない。
人は持って生まれた能力で戦っていかなくてはならない。私は戦って美しさを手に入れた。だから私は「美」の価値を知っている。せっかく美しく生まれながら、その価値を知らずに生きている女がどれほど多いことか

引用元:『モンスター』

 

過去を吹っ切って新しい生き方をするチャンスが何度もありながら、「田淵和子」は美しさを手に入れた「鈴原未帆」になっても、人を好きになり相手からも好きになってもらえたりする青春を過ごせなかったことや、容姿のことでいじめられ続けた怒り・悔しさに囚われ続けます。

自身の容姿に劣等感を抱き続けた人生から、「美」を求めることに夢中になり頑張った姿は、他人から見たら痛々しく愚かと思われたとしても「田淵和子」は幸せだったのだろうか?

私は一人二役の話は苦手だったんです。ドラマを観ても「そんなにまったく気づかない?」と思ってしまい不自然な感じがして。だけど「モンスター」は読んでて不自然さをまったく感じないから時間を忘れ小説の世界に入り込める。

約500ページの本なのにあっと言う間に感じました。 読みながら何度も「もう十分だよ、過去とかもう気にする必要ない」と田淵和子に伝えたい気持ちになりながらも、何かを手に入れ一時の満足感を感じても、得ることのできなかったことにとらわれ続ける気持ちも痛いほどわかるんですよね。だからこそラストが切なすぎて手元に置いておきたい本なのに再度読むことができないでいます。

著者「百田尚樹」さんは、男性の生きざまをえがいた「永遠の0」「海賊とよばれた男」など映画化された作品も数々ある方ですが、「モンスター」では女性の心理描写もこんなに繊細にされるんだと驚きでした。

2013年には、主演「高岡早紀」さん(特殊メイクで二役)、高木英介役に「加藤雅也」さんで映画化されました。

 

あとがき

長年体を酷使し手に入れた大金で整形を繰り返し美を追求した「田淵和子」が、手に入れたと思っていた「美」・「お金」・「男性の気持ち」は泡沫。

でも、どんな女性の中にも「田淵和子」の思いがあると思えるのです。

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